農業における人材不足の実態

2024.05.13

1.農業における人材不足の実態

日本の農業は人口減少高齢化社会の影響をダイレクトに受けており、長い間担い手不足と高齢化が問題視されてきました。

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担い手の減少と高齢化の主な原因は、年々離農する農家がある一方で、新規就農者が思うように増えないことが挙げられます。

49歳以下の新規就農者は、近年2万⼈前後で推移し、2020年は1万8千⼈と、多少の増減はあるものの、ほぼ横ばいです。

新規就農者は、農地の確保、資⾦の確保、営農技術の習得等が、経営開始時の⼤きな課題となっているほか、経営不振等の理由から定着できない就農者もいるということがわかっています。 r3_gaiyou_all.pdf (maff.go.jp)

若手新規就農者が長く農業を続けられるように、業界全体で新規就農者をサポートしつつ馴染みやすいコミュニティづくりに努めることが重要です。

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人材確保の課題と原因

高齢化と若手農業者の不足・農業のイメージ改善の必要性・農業労働における厳しい環境

2. 農業における人材不足に対する解決策

農業における人手不足という深刻な課題の概要がわかったところで、ここでは人手不足を解消するための対策について、いくつかの事例も踏まえながら紹介します。

労働環境の改善

就農者を増やすには、労働条件や就労環境の整備も大切です。トイレや更衣室などの衛生管理はもちろんのこと、「給与形態の 明確化」や「年間作業量の標準化」など、働きやすい職場環境づくりが欠かせません。

今後は農業の場でも、社会の一般的な職場と同様の就労環境を整えて、誰もが安心して働き続けられる体制を創出していく必要があります。

農業の特性を活かして「労働時間を短くする」「休暇を取りやすくする」などの工夫をすれば、就農希望者へのアピール材料にもなり得るため、人材確保のしやすさにつながります。

スマート農業の推進

ロボット技術やテクノロジーを活用するスマート農業も、人手不足の解消を担ってくれる存在です。

例えばスマートフォン一つで農地を管理することでこれまでの農作業の負担の軽減をしたり、ドローンから取得した生育データを分析することで、作物の生育状況や病虫害の発生可能性、収穫量を予測することが可能になり、従来よりも高度な農業経営が期待できます。

若手農業者の支援

若手農業従事者がなかなか増加しない背景として、都市型の生活を送っており現在の生活スタイルを変えたくないという事情がうかがえます。この問題への解決が期待できるものとして、近年、「半農半X」という考え方が注目されてきています。

半農半Xとは、農業とそれ以外の仕事や趣味を両立する考え方を指します。つまり、半農半Xが目指すものは、「自分が欲しい分だけを少し作る」という小さな農業であり、専業農家でも兼業農家でもない別の存在だといえます。

半農半Xはビジネスを目的としていないために生産性は低いものの、「就農者が増えるきっかけになる」として、農林水産省や自治体による支援も始まっています。

一例として、青森県弘前市では、農業の人手不足解消のために「行政職員のリンゴ園での副業」を許可しています。農業の中でも労働力を要する時期が集中する果樹栽培では、収穫シーズンの人手不足が深刻化しており、休日や終業後にアルバイトとして働くことで、人手不足や労働力不足の解消に貢献しています。

また、いきなり就農を考えるのではなく、まずは「農業インターンシップ事業」の制度を使ってみることもおすすめです。

農業インターンシップは、公益社団法人日本農業法人協会が農林水産省の補助事業として運用する事業で、受け入れ先の農家に一定の期間、住み込みで農作業を体験することが可能です。

参加費は無料で、交通費のみ自己負担です。農業体験だけではなく、食事や農作業後の生活等を経験することで、農業のすばらしさや課題も含め、農家としての生活を知ることができます。

外国人人材の登用

人手不足の解決策としては、外国人技能実習生を積極的に採用することも有効です。

実際に農業分野での外国⼈材の受⼊れは増加傾向で推移しており、2021年10⽉末時点の同分野の外国⼈材の総数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡⼤による⽔際措置の影響を受け、⼊国者数が⼤幅に減少する中でも、国内の技能実習⽣の在留延⻑等により、前年とほぼ同じ⽔準の3万8,532⼈にとどまっています。

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農業の未来を担うためには、人材確保が不可欠です。労働環境の改善、スマート農業の推進、若手農業者の支援、外国人人材の登用等、様々な施策を通じて、持続可能な農業を実現していくことが重要になります。

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