農業の人手不足の実態と未来を守る解決策・実践ポイント

2025.10.14

今、日本の農業は「人手が足りない」という悩みを多くの地域で抱えています。高齢化や後継者不足、新たに農業を始める人の激減などが重なり、畑や田んぼを守るための人手不足が常態化しつつあります。このままでは、食料の安定供給や地域の暮らしにも影響が出かねません。

しかし、できることから少しずつ取り組んでいけば、農業の未来をつなぐ道はきっと見えてきます。 この記事では、人手不足の背景を整理しながら、現場で無理なく始められるアプローチ方法をご紹介します。

目次

  • 農業の人手不足がもたらす危機:現状と背景
  • なぜ人手不足が起きるのか?主な要因
  • 人手不足が農業・地域にもたらす影響
  • 人手不足に立ち向かう解決方法
  • 対策を進める前に知っておきたいこと
  • 人手不足を解消するおすすめサービス
  • 農業の未来をつなぐために

農業の人手不足がもたらす危機:現状と背景

人手不足や高齢化といった言葉はよく耳にしますが、その背景を少し丁寧に見ていくと、農業が直面している現実がよりはっきり見えてきます。

ここでは、実際にどのくらい担い手が減っていて、どんな年代の人が農業を支えているのかを整理してみましょう。

基幹的農業従事者の激減と高齢化

農林水産省の白書(令和6年度版)によると、農業の中心的な担い手(基幹的農業従事者)は111万4千人。2000年の240万人から、20年あまりで半分近くに減ってしまいました。これは人手不足の進行を示す顕著なデータです。

さらに、そのうちの約7割が65歳以上で、49歳以下はわずか1割ほどという構成で、平均年齢は69.2歳に達しています。こうした高齢化構造が人手不足をさらに深刻化させています。

このように、若手が少ない体制では人手不足は加速せざるを得ず、現場での人手不足が新たな課題を生んでいます。

この人口構造の変化は「高齢化 → 引退 → 代わりがいない → 農地減少・耕作放棄地拡大 → さらなる人手不足 」という悪循環を全国で引き起こしているのです。


図1 基幹的農業従事者数と平均年齢


出典:令和6年度 食料・農業・農村白書


農業を続ける人が足りない…新規就農と後継ぎのいま

人手不足の背景には、「後継ぎがいないこと」が大きく関わっています。子どもが農業を継がなかったり、別の仕事を選んだりするケースも多く、家族経営の継承が難しくなっています。こうした流れは、家族経営の農家で人手不足を直接生み出す要因です。

さらに、新しく農業を始める人も年々減少しています。令和4年の農林水産省の調査によると、新規就農者は45,840人で、前年より12.3%減少しました。こうした数値からも 人手不足の構図が浮かび上がります。特に、家族経営を引き継ぐ「新規自営農業就農者」は31,400人で、14.9%の減少となっており、地域の農業を支える人材の確保がさらに困難になっており、人手不足の進行が止まりません。

もしこの傾向が続けば、2030年までに多くの農業経営体で 人手不足による経営縮小が避けられないとの予測もあります。地方部においては、若年層の流出や農地の分散化も重なり、人手不足の問題は一層深刻さを増しています。


図2 49歳以下の新規就農者数の推移(就農形態別)


出典:令和4年新規就農者調査結果

このままいくと、農業経営体の数は2030年までに半分に減る見通しとも言われています。すでに一部の地域では「10年後には半分以上の農地が継承できない」と予想されているところもあります。

地方部においては若年層の流出や農地の分散化も重なり、問題は一層深刻さを増しています。


なぜ人手不足が起きるのか?主な要因

人手不足は単一の原因によるものではなく、複数の構造的要因が絡み合っています。

以下、主要な原因と読み解きポイントを挙げます。

1. 労働条件・報酬の問題

農業は繁忙期と閑散期の差が激しいため、通年で安定した収入を得にくい産業です。加えて、重労働・屋外作業・天候リスクなどがあるため、「きつい仕事」「給料が見合わない」とされやすく、若い世代や転職希望者には魅力が低くなりがちです。

2. 新規参入ハードルの高さ

農地取得、資金調達、ノウハウ習得など、就農に必要な初期投資が重くのしかかることが、人手不足を招く要因となります。

特に、農地を確保できるかどうか、また初期投資(機械・設備)をどのように賄うかがネックになります。

3. 地方過疎化・人口流出

農村地域では人口減少・若年の都市流出が顕著で、そもそも地域で確保できる人的資源が少ないため、 人手不足が慢性化しています。

4. 農業の将来性イメージの不足

農業は本来、人の暮らしを支える大切な仕事ですが、都市部出身者や若者にとって、農業が「安定した職業・将来性のある産業」として認識されにくく、これが 人手不足の一因になります。

5. 高齢化と引退ペースの加速

既存の担い手自体が高齢化しており、引退年齢に達する人が増える段階で代替が追いつかない構図になります。また、引退後に農地を手放す、耕作放棄地化するケースも頻出しており、人手不足が急速に進む状態が生まれています。

人手不足が農業・地域にもたらす影響

“人手不足” は農業現場だけの問題ではなく、地域社会・国全体へ波及します。

以下、主な影響と懸念点です。

生産力・収量へのマイナス影響

人手不足による圃場管理の不足や作業遅延で、作付面積を縮小せざるを得ないケースが増えています。特に手作業比率の高い作物では、人手不足の影響が直接収量低下に結びつきます。

品質・安全性リスク

人手不足のために、きめ細かい管理が疎かになると、病害虫・劣化・品質低下のリスクが増します。適切な防除・施肥などのタイミングを逃すことがあるからです。

地域コミュニティ・農村維持の問題

農家人口が減ると、地域の共同活動が維持できなくなり、集落維持・インフラ整備・公共交通など地域サービスの維持が困難になります。

食料自給率・国土保全リスク

国内の基盤となる食料供給能力が、人手不足の影響で脆弱化するリスクがあります。また、耕作放棄地が増えると土壌劣化・荒廃化が進む懸念もあります

人手不足に立ち向かうための解決方法

人手不足を解消し、農業を持続可能にするためには、複数の解決方法を同時に進めることが求められます。ここでは、代表的な解決策と、現場で取り組みやすい具体的な工夫を紹介します。

1. 技術革新・ICT導入による省力化・効率化

ロボット、ドローン、スマート農業技術(IoT、AIなど)を活用することで、従来の手作業を減らし、人手不足を機械力で補うことが可能になります。例えば、農薬散布ドローンや自動除草ロボット、スマートセンサー管理などは、作業負荷を軽減し、経験や技能不足を補助する手段となります。

実践ポイント: まずはレンタルやリースで試験導入し、使い勝手や効果を評価することで、導入リスクを抑えられます。小規模圃場から始めることで人手不足に対する効果を検証していくと良いでしょう。


2. 外国人農業人材・技能実習生・特定技能の活用

一部地域では、外国人技能実習生や特定技能制度を活用して、農場の人手不足を補う取り組みが進んでいます。繁忙期の作業や継続的な労働力確保において、外国人材は大きな支えになります。

ただし、言語や文化の違い、生活環境の整備、定着支援などの課題もあるため、受け入れ体制の構築が不可欠です。制度の理解には、農協や行政窓口との連携が安心です。

実践ポイント:作業マニュアルの多言語化や翻訳ツールを活用し、円滑なコミュニケーションを図ります。住居や生活支援を整え、地域との交流を通じて定着を促すことが大切です。制度の詳細は専門機関に相談し、無理のない導入を心がけましょう。


3. 集落営農・法人化・共同利用・シェアリング

複数の農家で機械・人・ノウハウを共有・共同化することで、人手不足の影響を分散できます。実際に、複数農家がトラクターやコンバインを共同利用し、運用効率を高めている地域もあります。

実践ポイント: 近隣農家と協力し、作業の分担や機械の共同購入・貸出体制を整えることで、個々の負担を軽減できます。地域単位でルールや管理方法を話し合い、無理なく続けられる仕組みづくりが重要です。


4. 若者・新規就農者支援制度・補助金制度

国や自治体レベルでは、人手不足解消を意識した支援事業が整備されています 。

例えば、農業労働力確保支援事業、就労条件改善支援などがあり、人手不足に対応する資金的・制度的裏付けが用意されています。

実践ポイント: 市町村の農業委員会やJA、地域振興局などに相談することで、自分の地域に合った支援制度を把握できます。制度の内容や申請条件は地域ごとに異なるため、早めの情報収集と担当窓口との連携がスムーズな活用につながります。


5. イメージ改革・情報発信・教育支援

人手不足を克服するためには、農業の魅力を伝える広報活動や体験型就農プログラム、学校教育との連携も重要です。「持続可能で成長性のある職業」としての農業のイメージを広げることで、若者の関心を引きやすくなります。

実践ポイント:地元の学校や地域団体と協力して、農業体験や見学会を企画することで、次世代との接点をつくることができます。SNSや地域広報誌などを活用した情報発信も効果的で、農業の魅力ややりがいを伝える機会を増やすことが、若者の関心につながります。



人手不足対策の注意点

農業の人手不足に向けた取り組みは、希望のある一方で、現場ではいくつかの課題や注意点もあります。導入前に知っておくことで、無理なく継続できる体制づくりにつながります。

技術導入のコストと運用負担

スマート農業や機械化は魅力的ですが、導入費用・メンテナンス・操作習得などの負担が発生します。小規模農家では、試験導入やレンタル活用など、段階的な導入が有効です。

人材の定着と育成の難しさ

新規就農者や移住者、外国人労働者が定着しないケースもあります。受け入れ体制や生活支援、継続的なフォローが不可欠です。

共同運用の調整と合意形成

機械や農地のシェアは効率的ですが、利用ルール・責任分担・トラブル対応など、地域内での合意形成が必要です。事前の話し合いや協定づくりが鍵になります。

補助金依存のリスク

補助金は心強い支援ですが、初期支援後の収益モデルが弱いと継続が難しくなります。補助金に頼りすぎず、長期的な経営設計が重要です。

地域ごとの条件差

地形・気候・交通アクセスなど、地域によって条件が大きく異なります。一律の制度では対応しきれないため、地域特性に合わせた柔軟な設計が求められます。


人手不足を解消するおすすめサービス

農業×ワーケーション 「No 農 No Life(ののの)」

農機具導入や人材確保が難しい今、「ののの」は“農業 × ワーケーション”という新しい形で、農家の人手不足を補いながら、農と暮らしをつなげるサービスを提供しています。

【メリット】

  • 短時間型支援:繁忙期などに 人手不足を手軽に補える
  • 入門的体験:農作業をやったことのない人でも手を貸してもらいやすく、未来の担い手との接点になる可能性
  • 滞在拡充:滞在設備・テレワーク環境があれば、「農 × 仕事」ができる人を受け入れやすくなる
  • PR・発信力:ワーケーションというテーマでメディア性をもたせられ、地域の魅力発信につながる

【こんな方におすすめ】

「農作業を手伝ってほしいけれど、フルタイムの雇用は難しい…」と悩んでいる方におすすめです。

サービス紹介:No 農 No Life(ののの)


農業×短期人材マッチング 「農How(ノウハウ)」

農機具導入や長期雇用が難しい農家にとって、「農How」は 1日単位で農業バイトを依頼できるアプリ型マッチングサービス です。「ちょっと人手が欲しい」場面を手軽にカバーできる仕組みを提供しています。

【メリット】

  • 短期支援対応:繁忙期や急な作業で 人手不足を即時補える
  • スキマ人材活用:日単位募集なので、作業量に応じて人を呼べる
  • 初心者対応:動画マニュアル付きで農業経験が浅い人でも対応可能
  • 無料登録・簡単手続:アプリを使って簡単応募・依頼でき、手間が少ない

【こんな方におすすめ】

毎日人を雇うのは難しいが、「特定の日だけ人を手伝ってほしい」農家さんにおすすめです。

サービス紹介:農How(ノウハウ)


農業×旅+お手伝い「おてつたび」

旅人がお手伝い(農作業など)をする代わりに宿泊場所や報酬を受け取れる形で、農家の人手不足を支援します。

【メリット】

  • 繁忙期対応型支援:特定日や作業日に、旅人を使って 人手不足を補える
  • コスト抑制:長期雇用ではなく、必要なときにだけ受け入れ
  • 地域魅力発信:旅人が地域を体験することで農家・地域の魅力を外に発信
  • 交流拡大:旅人を通じて異なる視点を得られ、地域ネットワークにもつながる

【こんな方におすすめ】

⇒地域資源を活かしつつ人手不足を補いたい農家さんにおすすめです。

サービス紹介:おてつたび


農託(農作業マッチングサービス)

作業を委託したい農家と、農作業を受けたいコントラクター(受託者)をWeb上でつなぎ、人手不足 を効率的に解消できる仕組みを提供しています。

【メリット】

  • 作業委託が簡単:Web上で委託希望を出すだけで、複数のコントラクター候補が提案され、人手不足 の場面を手間少なく補える
  • シミュレーション機能付き:作付け面積を増やした場合の労働力や所得の変化などを予め試算でき、人手不足を見える化して判断できる 
  • 適正価格で委託可能:受託価格・原価計算ツールを使って、人件費・機械代などを含めた価格設定が可能。赤字を防ぎつつ人手不足を解消できる助けになる 
  • コスト発生前のリスク低減:マッチングが成立するまで費用がかからないため、委託する側は人手不足対応のコストを抑えて試せる

【こんな方におすすめ】

⇒人手不足の影響をシミュレーションしてから判断したい方や、委託先との価格交渉や見積りで不安がある方におすすめです。

サービス紹介:農託(農作業マッチングサービス)

1日農業バイトアプリ「デイワーク」

デイワークは「1日単位で農作業を依頼できるマッチングアプリ」サービスを提供しています。アプリを通じて、働きたい人と農家を結び、人手不足を柔軟にカバーする仕組みです。

【メリット】

  • スポット対応力:繁忙期や特定日に 人手不足が発生した時だけ募集できる
  • 手数料無料/低コスト:求人者・応募者ともに基本的な利用料は無料(登録・募集にかかるコストを抑えられる) 
  • 幅広な応募層:農業未経験者や副業希望者、学生、兼業者など、多様な人材から応募可能 
  • 簡単操作・即時通知:アプリ内で募集登録・応募対応が可能で、マッチ成立時にはプッシュ通知がくる

【こんな方におすすめ】

⇒未経験者や副業希望者からの応募が多いため、コストを抑えつつ、人材を確保したい方や1日単位・短時間で柔軟に補いたい農家さんにおすすめです。

サービス紹介:1日農業バイトアプリ「デイワーク」




  • 農業の未来をつなぐために

    ここまで見てきたように、人手不足の課題に向き合うには、地域や現場ごとの工夫と、少しずつの積み重ねが大切です。 すべてを一度に変える必要はありません。まずは「今できること」から少しずつ手をつけていきましょう。最後に、人手不足への対応を軌道に乗せるための工夫と、意識しておきたいポイントを6つにまとめました。

    小さく始めて、段階的に広げる

    新しい取り組みを始めるときは、いきなりすべてを変えようとせず、まずは試験圃場や一部の作物など、限られた範囲から始めるのがおすすめです。小さな成功体験を積み重ねることで、継続の土台が自然と育っていきます。

    評価と見直しのサイクルをつくる

    導入した技術や制度は、使ってみて初めて見えてくる課題もあります。一定期間ごとに振り返り、改善点を見つけて調整することで、より現場に合った形へと育てていくことができます。無理なく続けるためには、こうした見直しの習慣が欠かせません。

    合意形成を丁寧に進める

    共同利用や地域制度を導入する際には、関係者との話し合いをしっかり行い、利用ルールや責任分担、トラブル対応などを文書にまとめておくと安心です。事前の合意形成が、後々の不安や誤解を防ぎ、気持ちよく協力し合える環境づくりにつながります。

    補助金や支援制度を上手に使う

    新しい取り組みには、どうしても初期コストがかかります。国や自治体の支援制度(担い手支援交付金、スマート農業補助金など)を活用することで、負担を軽くしながら前に進むことができます。申請には地域の窓口との連携が大切なので、早めの相談がおすすめです。

    人材の育成と定着を意識する

    新しく加わった人が安心して長く働けるようにするには、初期の教育体制だけでなく、日々の声かけや働きやすい環境づくりが大切です。 その人が「この先もここで働きたい」と思えるように、少しずつ役割や成長の道筋を示していくことも重要です。たとえば、収穫作業から栽培管理へ、農機の操作を任せる、地域の研修に参加してもらうなど、将来の展望が見えることで安心感につながります。こうした積み重ねが、持続的な人材確保につながります。

    長期的な視点で設計する

    農業は一年ごとの成果も大切ですが、5年・10年先を見据えた事業設計を意識することで、より安定した運営が可能になります。技術の更新や機械の寿命、地域の人口やニーズの変化なども見込んでおくと、将来の備えになります。


    最初は「見える化 → 小規模試験 → 共同化 → 技術導入 → 担い手受け入れ体制づくり」という流れを意識して進めると、無理なく改善の歩みを進められます。 一歩ずつでも、動き出すことで農業の未来は変わっていくのではないでしょうか。

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