農業の新しい風:現代の農業が抱える課題と革新的なアプローチ

2024.02.29

はじめに

農業の現場では温暖化、病虫害防除、人手不足等の外部環境による変化や新たな成長産業化の取組の本格化等、様々な課題に直面しています。

こうした環境の変化に迅速に対応して現場のニーズに応えることが重要となっており、持続可能な未来を築くためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

そこで、本稿では、現代の農業における主な課題とそれに対する解決策に焦点を当て、公開しております。

農家が直面する課題と対応策

1.気候変動への対応

日本の年平均気温は、100年あたり1.28°Cの割合で上昇しており、農林水産業は気候変動の影響を特に受けやすく高温による品質低下などが既に発生しています。

また、気候変動による影響として降雨量の増加等、災害の激甚化の傾向にあり、農林水産分野でも多大な被害が発生しています。

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持続可能な農業のためには、気候変動に強い品種の開発や、新しい栽培技術の導入、また、農業者に気象データや予測情報を提供するシステムの拡充が必要不可欠です。

実際に気候変動に強い品種の開発例を以下に示します。

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2.水資源管理の重要性

農業の基盤となる水資源は、気候変動による異常な気象条件が加わり、十分な水供給がますます難しくなっています。

持続可能な水資源管理の確立が急務であり、これには効率的な灌漑技術の導入、地元の水循環システムの最適化、そして節水型作物の開発などが効果的です。

実際に、水田の水管理を遠隔・自動制御化するほ場水管理システムの開発等の取り組みも進められており、センシングデータなどを活用して、最適な水管理を行うことで、用水量の半減や水管理に費やしていた労力を大幅に削減することに成功しています。

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出典:(株)クボタケミックスWebサイトより

3.農薬の使用と環境への影響

気候変動と並んで、生物多様性についても人類史上これまでにないスピードで、生物多様性が減少しており、約100万種の動植物が絶滅の危機にあります。

過剰な農薬使用は環境への悪影響を引き起こし、また、残留物が食品に残る可能性があります。

農林水産省は2050年までに化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減と輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の30%低減を目指すことを掲げており、持続可能な農業には、これらを考慮した新たな技術の導入が必要です。

実際にいま進められている取組としては、生育タイミングに合わせた高度な肥料の開発やAI等を活用して土壌を診断する技術等の開発が進められており、化学肥料の使用量の提言に向けた取組が今後もますます増えていくことが予想されるでしょう。

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4.病気への対応: 健康な農産物の実現

農林水産省が農家向けに実施した現場のニーズに関する調査では、特に栽培や防除といった営農の基本技術に関するものが過半を占めており、多くの農家にとって共通の課題であることがわかります。

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害虫や作物の病気への対応は不可欠です。耐病性のある品種の開発や、病気の早期発見をサポートする技術の導入が重要です。

病害虫の総合防除対策として、ドローンやロボットを用いた防除・除草技術の確立や、AI等を活用した土壌病害発病ポテンシャルの診断技術が普及しており、今後ますます病虫害に対する解決策の精度が高まっていくでしょう。

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5.鳥獣害対策: 生態系との共存

野⽣⿃獣による農作物被害は、営農意欲の減退をもたらし耕作放棄や離農の要因になるなど、農⼭村に深刻な影響を及ぼしています。

このため、地域の状況に応じた⿃獣被害対策を全国で進めるとともに、マイナスの存在であった有害⿃獣をプラスの存在に変えていくジビエ利活⽤の取組を拡⼤していくことなど、様々な取り組みが勧められています。

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野⽣⿃獣による農作物被害額は年々減少傾向にありますが、⿃獣被害は離農動機としても挙がることから、⿃獣被害対策を継続的に推進していくことが重要です。

近年では、鳥獣害対策としてのサービスや罠を開発する事業者も増えており、そういったサービスを利用する農家も増えています。

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6.農業労働力不足への対応

日本の生産者は年々高齢化し、今後一層の担い手減少が見込まれ、労働力不足等の生産基盤の脆弱化が深刻な課題となっています。特に農村の平地や山間部で顕著に見られ、里地・里山・里海の管理・利用の低下による生物多様性の損失が続いています。

農業における労働力不足は、作業の効率低下につながっています。

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労働力不足が深刻化する中、解決策としては、自動化技術の導入、農業機械の改良、および農業への新たな人材の導入です。これにより、作業が効率化され、同時に働き手が減少する問題に対処できます。

スマート技術等の新技術は、作業の負担軽減や安全性向上、環境負荷軽減など様々な効果が期待され、そのメリットは大規模経営だけでなく、中小・家族経営や、平場から中山間地域、若者から高齢者など、様々な農家が享受することができます。スマート農業に関する記事はこちら

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まとめ

現代の農業における課題は年々複雑化してきており、持続可能な未来の構築に向けてより高度な取り組みが必要です。

今回は気候変動への適応、水資源管理、環境への配慮、病気への対応、鳥獣害対策、そして労働力不足への対処についてご紹介しましたが、持続可能な農業の実現に向け、私たちの知識と技術を結集し、協力していくことが農業の未来を担保する鍵となるでしょう。

参考:緑の食料システム戦略index-112.pdf (maff.go.jp)