スマート農業の課題とは?人手不足時代に現場で考えたいポイントをわかりやすく解説

2026.02.17

スマート農業は、農業の人手不足や高齢化といった課題を背景に、解決策として注目されています。センサーやドローン、AI、ロボット技術などを活用することで、作業の省力化や効率化が期待されています。
一方で、「導入コストが高そう」「本当に現場で使えるのか分からない」「導入したがうまくいかなかった」といった声も少なくありません。スマート農業は期待が集まる一方で、現場ならではの課題を多く抱えているのが実情です。スマート農業は、導入すればすぐにすべてが解決するものではありません。実際の農業現場では、導入後に新たな課題に直面するケースも見られます。
本記事では、スマート農業のメリットだけでなく課題にも目を向け、人手不足時代の農業においてスマート農業とどう向き合うべきかを、現場目線でわかりやすく解説します。導入を検討する際の判断材料として、参考にしていただければ幸いです。



スマート農業とは何か

スマート農業とは、ICTやAI、ロボット技術、センサーなどを活用し、農作業の効率化や高度化を目指す農業の取り組みを指します。スマート農業では、作業の自動化やデータの見える化を通じて、経験や勘に頼らない農業を実現することが期待されています。
例えば、農薬散布ドローン、自動走行トラクター、圃場センサー、作業記録アプリなどは、スマート農業を代表する技術です。これらの技術を活用することで、作業時間の短縮や省力化、作業の標準化が可能になるとされています。
日本では農業の人手不足が深刻化しており、スマート農業はその解決策として国や自治体からも推進されています。しかし、スマート農業は「導入すればすべて解決する万能な技術」ではありません。スマート農業が思うように普及しない背景には、さまざまな課題が存在しています。

スマート農業が注目される背景と人手不足の状況

農業分野では、就業人口の減少と高齢化が進み、従来のやり方では経営を維持することが難しくなっています。繁忙期に人手が集まらない、後継者がいないといった課題は、多くの農家が直面している問題です。
こうした状況の中で、少ない人数でも農業を続けられる仕組みとしてスマート農業が注目されてきました。スマート農業によって作業時間を短縮できれば、人手不足の影響を軽減できる可能性があります。
しかし実際には、スマート農業を導入しても人手不足がすぐに解消されるわけではありません。スマート農業を導入することで作業は変わりますが、人が不要になるわけではなく、むしろ新しい作業や管理が増えることもあります。この点を理解せずにスマート農業を導入すると、「思っていたのと違う」というギャップが生まれやすくなります。

スマート農業を持続的に活用するためのコスト設計

スマート農業の課題として多く語られるのが、導入や運用にかかるコストです。スマート農業では、ドローンや自動走行機械、各種センサー、営農管理システムなどを組み合わせて活用するケースが多く、一定の初期投資が必要になります。

補助金を活用してスマート農業を導入できる場合もありますが、重要なのは「導入できるかどうか」だけでなく、「導入後も無理なく使い続けられるかどうか」です。更新や修理、サポート費用など、運用段階でのコストまで見据えた設計ができていないと、スマート農業の課題が表面化しやすくなります。

現場からは、「トラブルが起きた際の相談先が分かりにくい」「想定以上に維持管理費がかかる」といった声が聞かれることもあります。だからこそ、スマート農業を検討する際には、初期費用だけでなく、長期的な運用コストやサポート体制まで含めて考えることが重要です。

 スマート農業の課題は、コストの高さそのものではなく、持続可能な活用設計ができているかどうかにあります。

スマート農業を現場で活かす人材と体制づくり

スマート農業では、機械やシステムを操作するだけでなく、蓄積されるデータを日々の判断に活かす力が求められます。一方で、農業現場ではIT機器に不慣れな方も多く、スマート農業に対してハードルを感じるケースもあります。

スマート農業を導入したものの、「特定の人しか使えない」「担当者が変わると運用が止まってしまう」といった事例も見られます。こうした点は、スマート農業の技術的な問題というよりも、人材配置や運用体制の設計が不十分だったことによる課題といえます。スマート農業を現場に定着させるためには、「誰が日常的に使うのか」「誰が管理・判断を担うのか」をあらかじめ明確にすることが欠かせません。操作を一部の人に任せきりにするのではなく、現場全体で少しずつ理解を共有していくことで、スマート農業は本来の力を発揮しやすくなります。


スマート農業を支える通信環境・インフラをどう整えるか

スマート農業は、センサーやクラウド、遠隔操作などの技術を活用するため、通信環境と密接に関わっています。スマート農業の効果を最大限に引き出すためには、安定した通信環境が重要な前提条件となります。

一方で、農地が山間部や中山間地域にある場合、通信が不安定になりやすいという現実もあります。通信状況によっては、データが十分に取得できなかったり、システムの一部が想定どおりに動作しなかったりすることもあります。こうした点から、スマート農業の課題は、個々の農家の工夫だけで解決できるものばかりではなく、地域の通信インフラや環境条件とも深く関係していることが分かります。だからこそ、スマート農業を検討する際には、技術そのものだけでなく、「どの環境で、どこまで活用できるのか」を見極めたうえで導入を進めることが大切です。


課経営規模に応じたスマート農業の選び方が重要

スマート農業は、大規模農業での活用事例が多く紹介されることから、「規模が大きいほど効果が出やすい」というイメージを持たれがちです。確かに、作業面積が広いほど、省力化や効率化による効果が数字として表れやすい側面はあります。

一方で、スマート農業の効果は経営規模だけで決まるものではありません。小規模農家であっても、作業内容や課題に合ったスマート農業を選ぶことで、負担軽減や作業の安定化といった価値を実感できるケースもあります。

重要なのは、「他の農家が導入しているから」という理由ではなく、自分の経営規模や作業工程に照らして、どのスマート農業技術が適しているかを見極めることです。スマート農業の課題を整理することで、「導入すべきかどうか」だけでなく、「どこから取り入れるか」という判断もしやすくなります。スマート農業は、すべての農家に同じ形で効果をもたらすものではありません。だからこそ、規模に応じた選択を行うことが、スマート農業を無理なく活用していくための大切なポイントといえます。

スマート農業を現場に根づかせるために大切なこと

スマート農業を現場に根づかせるためには、技術そのものだけでなく、導入の進め方や現場との向き合い方が重要になります。スマート農業は、作業の見える化やデータ管理を前提とするため、これまで経験や勘を中心に成り立ってきた農業のやり方とは、考え方や進め方が異なる部分も少なくありません。

そのため、スマート農業を導入する過程で、「これまでのやり方を変えることへの戸惑い」や「新しい作業に慣れるまでの負担」を感じる農家も多くいます。これはスマート農業の欠点というよりも、新しい仕組みを取り入れる際に自然に生じるプロセスといえます。

また、スマート農業の効果は、導入してすぐに目に見える形で現れるとは限りません。多くのスマート農業技術は、データを蓄積し、活用しながら改善を重ねることで、徐々に現場にフィットしていきます。そのため、短期的な成果だけを求めてしまうと、「思ったほど効果が出ない」と感じやすくなります。

スマート農業を現場に根づかせるためには、最初から完璧を目指すのではなく、小さく試しながら少しずつ活用範囲を広げていく姿勢が大切です。時間をかけて慣れていくことを前提にすることで、スマート農業は現場にとって無理のない、継続可能な取り組みになっていきます。


ドローン活用に学ぶスマート農業の進め方

スマート農業を現場に根づかせる方法として、ドローンを活用した農薬散布の事例があります。多くのケースでは、スマート農業を一気に導入するのではなく、負担の大きい工程に絞って取り入れる形が選ばれています。

人力での農薬散布は重労働になりやすい一方、ドローンを活用することで作業負担の軽減が期待できます。ただし、運用や調整といった新たな作業も生まれるため、現場に合った使い方を見極めることが欠かせません。

こうした事例は、スマート農業を「全面的に変える技術」ではなく、課題に応じて部分的に活用する選択肢として捉える重要性を示しています。

現場に取り入れやすいスマート農業の取り組み

inaho(トマト収穫ロボット)

主な特徴
  • AIが熟度を判定し、自動で選択収穫 
  • 最新モデルで精度・速度・耐久性を向上
  • 2台のカメラ搭載により認識時間を短縮し効率的に収穫 
  • 作物へのダメージを抑えた設計
導入しやすいポイント
  • 「収穫工程」に特化しており部分導入しやすい
  • 栽培方法を大きく変えずに活用可能
  • 繁忙期の人手不足対策として検討しやすい

株式会社FieldWorks(ウネマキ)

主な特徴
  • ラジコン操作で遠隔から薬剤を散布できるロボット
  • コンパクトな機体で、畝間やハウス内でも使いやすい設計
  • 直感的な操作が可能で、免許不要・片手操作でも扱える
  • 除草・防除の両方に対応するバリエーションを展開
導入しやすいポイント
  • 操作がわかりやすく、どなたでも扱いやすい設計
  • コンパクトなため、これまで機械化が難しかった現場にも導入しやすい
  • 背負い動噴が不要で、薬剤散布時の身体的負担の軽減が期待できる


段階的に取り入れるスマート農業という考え方

スマート農業は、「一気にすべてを変えるもの」ではありません。農薬散布や病害虫対策、作業記録のデジタル化など、日々の作業の中で負担を感じている工程から少しずつ取り入れていくことができます。

特定の作業に限定してスマート農業を導入することで、初期コストや運用の負担を抑えながら、自分の農業に合った使い方を見つけやすくなります。まずは小さく試し、効果や手応えを確認しながら次のステップを考える。この積み重ねが、スマート農業を無理なく続けるためのコツです。

スマート農業の課題を理解することは、慎重になるためではなく、選択肢を増やすためのプロセスでもあります。自分の経営規模や作業内容に合わせて、必要なところに必要な分だけ取り入れることで、スマート農業は現場に根づき、長く役立つ存在になっていきます。

スマート農業は「導入するか、しないか」の二択ではありません。段階的に向き合いながら、自分なりのスマート農業の形をつくっていくことが、これからの農業において大切な考え方といえるでしょう。


まとめ:スマート農業は課題を知ることで判断できる

スマート農業を正しく活用するためには、メリットだけでなく課題もあわせて理解しておくことが大切です。課題を知ることで、「導入すべきかどうか」「どこから始めるべきか」「自分の経営規模に合っているか」といった点を、より具体的に考えられるようになります。

スマート農業は、人手不足や作業負担の軽減といった可能性を持つ一方で、初期投資や運用体制の整備、通信環境など、検討すべき要素も少なくありません。しかし、それらを事前に把握しておくことで、過度な期待や不安に振り回されることなく、冷静に判断することができます。

重要なのは、スマート農業を「流行」や「正解」として捉えるのではなく、自分の農業経営にとって必要な選択肢の一つとして位置づけることです。課題と向き合いながら、できるところから少しずつ取り入れていく。その積み重ねが、これからの時代に合った持続的な農業経営につながっていくでしょう。