「農のかけ算」農×副業

2024.06.21

「農家は稼げない。」そんなことを当たり前にいう人は最近減ってきたが、昔はそんなイメージも横行していた。実際、農業で稼ぐのはさほど簡単ではない。昨今では特に資材は高騰しているし、燃料も20年前の約2倍だが、農作物はなかなか卸価格には反映されない。そんな中でもしっかり稼いでる農家も多く、一概に時代が悪いからだとも言い切れないのは世の常だ。品目の問題もあるし、産地の問題もあるだろう。そこには代々受け継いできた稼業がたまたまそれだったなどの運の良し悪しも必ずあるだろうが、あきらめずに農業を営んでほしいと心から思っている。

そういった中で何とかやってはいるものの、もう少し収入があれば気持ちも生活も楽になるのにと思っている農家さんも多いだろう。そこで今回は農家の副業、副収入について考えてみたい。

ひとまず、農家がお金を得る方法を確認すると、これはわかりやすく、簡単に想像もつくだろう。言わずもがな、作物であれば栽培したものを様々な形で販売することが主な収入だろう。ついで加工品などの商品を作って販売もある。果樹であるならば、観光農園も少なくない。作物を売ると同時に体験を売る。意外と知ってるようで意識してない人も多いが、苗を作って一般人や農家に売るのも悪くない収入だ。最近では飲食店やキッチンカーをやっている農家さんも多い。


地域や品目にもよるが、農家には農繁期、農閑期があり、オフシーズンになるとアルバイトに出かける農家も少なくない。私の知っている長野だと冬場はスキーのインストラクター、除雪車のオペレーター、趣味が高じて酒蔵の手伝いに行く農家などもいる。単純にそれ以外の高時給なアルバイトをしている人も多いだろう。法人などの大きめの農家は通年雇用の社員がいるため、近隣の県の産地に赴き出荷代行の作業受託や気候の異なる地域に畑を借りてその土地や時期に合った作物を栽培してオフシーズンの不足しがちなキャッシュを補っている。

副業と考えるとどうだろう。

意味を調べると副業とは「本業以外での仕事で収入を得ること」と定義されている。長い時間サラリーマンをやっといて言うのもおかしいかもしれないが、本業という概念が私はあまり好きじゃない。今は何をやってるの?という職業やジャンルを聞かれると困ってしまう。答えはいろいろになってしまうからだ。自分を何かのジャンルや職業で縛ってしまうと一気に視野が狭まってしまうし、実際農業を営む人の視野は思いのほか狭い。それが悪いとも言わないがどんなジャンルや職業に属していても視野は広く持ちたいし、枠から外れることにこそ価値やチャンスがあると思っているので様々な経験や異分野同士のかけ算をどうしても好んでしまうのだ。

農業で新たな収入を得ようとする考えを副業という定義にあてはめようとすると合わないかもしれないが、農業という職種はキャッシュポイントにできるところがまだまだ未開発だと感じている。ようは、もっとお金に変えられる部分があるはずなのだ。

例えば、上記にもあげた観光農園は基本的に果樹やフルーツが主流で葉物や果菜類は極端に少ない。であればそこにも工夫次第ではチャンスがあるのではないか。また、いわゆるOO狩りと言われるものは基本的には昼間の運営が9割以上だろうが夜、ライトアップしてやればもっと違う形でのターゲットを狙え、幻想的な世界を創れるのではなかろうか。


上記の例はすでに存在するが、いわゆるメタ認知で農業を見たときには新たな発送はまだまだ出るように思える。そこに対して動きをとれるかも農家次第だ。アイデア自体はたくさんあるだろう。これは世界を変えるというアイデアを持っている農家さんもいるかもしれない。だがどれだけ素晴らしいアイデアも形にならなければ意味がない。とはいえ、形にするのも決して簡単ではない。だから、夢を語ることや、人に頼ることが必要になる。そして、それが当たりまえにできる社会であればと願っている。

動けと言われても、実際のところ農家は忙しい。「どこにそんな金と時間と人がいるんだ!」と怒鳴られるのは容易に想像ができる。そう、農家は忙しいのだ。なのに副業などもっと収入が必要だと感じる方も少なくない。相変わらず話はずれるが、もし働いている時間や投資した額の割に利益を出せていないのであれば、営農としては理想的な形ではないので根本的に見直すべきだ。それでもこれが幸せというのであれば問題はない。仕事として目的がお金を稼ぐことであればの話だ。なので、現状を変えたいという思いがあるならば、仕事を工夫して新しい挑戦に踏み出すしかない。

農家が副業として新しい事業やキャッシュポイントを生み出したいのであれば、まずは自分やその環境が持っている武器を確認することから始めるべきである。どんな場所に住み、どの品目をどんな環境で作っており、そこは客観的に見てどんな人がいるのか。例えば、都市部に近い、観光名所に近い、海辺に近い、山間部なのか、認知度のある特産物があるかなどなど。同時に自分自身が持っている武器、自分ではそう思えないかもしれないが凝った趣味を持っていたり、農業をする前に経験した仕事、音楽好きでも釣りでもいい。こんなのなんの自慢にもなりはしないとみんな思っているからこそ、それが盲点となりうる。自分ではなかなか見つけきれない場合は、家族や友人と話しながら書き出していくことをお勧めする。第三者のほうが自分の知らない自分の価値を知っていたりするものだ。



それがわかれば、それらと自分の農業とを組み合わせて需要がありそうなものを探せばよい。それ自体が難しい場合、とにかくそのキーワードをネット上で検索してみよう。必ず近い何かがあるはずなので、それを真似することから始めればいい。そして、何かを見つけたときはとにかく身近な人にそれを語ってみよう。たいていの場合、ネガティブな言葉が返ってくるので、それはチャンスととらえてよい。また、自分にできないことはとにかく人に相談すること。そうすると様々な出会いにつながるし、自身の学びにもなる。これぞと思ったら小さく始めてみよう。最初からお金をかけすぎると取り返しがつかなくなる可能性が高いので気を付けよう。なぜならかなりの確率で失敗するからだ。
じゃあ何の話をしていたのだと思われそうだが、ほとんどの場合うまくいくことはない。でも、それでいい。そこから多くの学びを得て次につながる。何かに挑戦するということはそういうことだと理解して再度挑戦するか、営農を改めて見直し、改善したほうが楽だと思うか、あきらめてコツコツやっていくかしかない。それで自分の本質が見えるようになるのだ。そのうえであればどんな道を選んだとしても負け犬じゃない。自分の選んだ道を胸を張って歩けばいい。

とはいえ、もっとやりやすい副業はないのか、というのであれば畑を貸す、機械を貸す、知識や経験などを売るなど様々考えられるが、手っ取り早いのは飲み会を開催するが良いだろう。とかく農家はよく飲む。愚痴の場かもしれないし、情報交換の場かもしれないが、ひとまず農家として地域に根差していれば10人程度は集められるだろう。忘年会でも新年会でも決起集会でもよいので 声かけられる人に声をかけて店を予約し、LINEグループを作り、連絡をする。5000円が飲み代とするならば、5500円として、10人集まれば5000円が儲かる仕組みだ。支払いをカードにして、さらにポイント稼ぐのもよいし、幹事無料のお店を探し、手出しをゼロにするのも可能だ。
もう一つ上げると、田舎の畑の周りや自宅、農業機械の入っている倉庫やハウスの周りには車が2,3台止められるスペースがあるはず。そこをキャンピングカーで旅をしている人に貸せばいい。実際に「Carstay(カーステイ)」という会社が車中泊スポットを募集している。そこに登録しておけば、地域や環境によるが予約が入る可能性はある。オプションで農作物を付けたり、農業体験などを付ければ家族連れからも喜ばれるだろう。
携帯さえ持っていれば、インスタやティックトックに挑戦することもできるはずだ。


そもそもでいうと、営農で経済的に困らないのが一番良いだろう。そこを改善する方法やそれを手助けするコンサルもいる。そこに投資ができないならせめてネットで学んだり、近隣の儲かってそうな農家に相談するは可能だろう。それさえもできないというのであれば、あきらめるしかない。転職を考えてもいいだろうし、今の暮らしのまま幸せを突き詰める方法もある。

今を変えたいのであれば、今日と同じことを明日やっていては絶対に変わらない。
まずは、いつもと違う道を通り、いつもと違う曲がり角を曲がってみよう。
そこに新たな発見が必ずあるはずだ。