私はもともと国際支援の世界にいたことから、20歳で国際支援の世界に入ると決めた段階から環境問題には強く関心を持っていて、今でも意識している。環境問題を意識する人ならだれでも読んだことはあるか、知っているだろう「沈黙の春」「不都合な真実」などの本はは私に地球の未来を心配させるには十分な内容だった。
当時から20年以上たち、気候変動は加速しているだろう。断言できないのは情報の精査ができるほど知識を持っていないからだが、あの当時と明確に変わったのはインターネットが一般的になり、SNSや動画サイトなど誰でも情報が手に入るようになったことと同時に、誰でも情報を発信できるようになったことはよい面も悪い面もあるだろうが個人的にはおぞましく思う部分が強い。 そもそも正しい情報や真実の精査は一般人には難しい。ネット社会で情報量が多く、なおかつ一個人が信じた情報さえもさも真実かのように流布され、それが著名人や有名人であればその情報自体に価値が付くかのように煽り、先導される。私がおぞましいというのはこの部分である。 とはいえ、今回は情報についての見解を話す場ではないので、ここからひとまず環境問題における気候変動の影響などを見ていく。この情報さえもネット上で拾うものなので正しく真実であるとはいいがたいが、一般論として受け止めていただきたい。
今年の2月15日に出されたBBCのニュースによると、「世界の平均気温が観測史上初めて、年平均で工業発達以前に比べて1.5度以上、上昇していたことが、欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)の研究で明らかになった。」とのこと。
これは体感であれば少し熱くなっただけでしかないが、2023年に世界中で起きた森林火災もこの地球温暖化による乾燥がその被害を爆発的なものにしたといえる。信じられないような話だが、昨年カナダで起きた森林火災では日本の国土の約37%にあたる森林が火災によって消失している。もちろん世界中でも森林火災は起きており、とんでもないスピードで世界から森林が無価値に消え去っている。いや無価値どころではなく、火災が発生することで我々がエコカーなどでコツコツ排出を抑えているCO²が莫大な量として排出され、またそれを浄化するため木々そのものが燃えているのだ。 また、気温の上昇により、海水温度も統計史上過去最高になり、漁業に影響していることは想像に難くないだろう。山岳氷河や南極の氷も解けだし、海面の上昇も進んでいる。その影響はツバルなどの海抜の低い島国を海に沈めようとしている。
では、農業への影響はどうだろうか。
農家として外に出る仕事をしていると温暖化の影響という認識をしているかは別として、昨今の異常気象については認識がある方が多いのではないだろうか。毎年のように来る「数十年に一度」の異常気象は台風や干ばつ、暖冬や長雨など毎年違った形でやってきている。だがそれについてもやはり温暖化を由来とする気候変動が原因だといわれている。
そしてその影響は確実に農作物の栽培にも影響してきている。 水稲では気温上昇の影響で 高温登熟障害により、等級ダウンや精米ロスの増加、食味の低下などが起きるといわれている。果樹では発芽や開花に影響があり、葉物は高温障害により発育不足や不結球などもある。ハウス栽培では温度管理である程度は対応もしているだろうが、それもすべてコストでしかないので、営農には少なからず影響もあるのは間違いない。最近では温暖化を利用してか、熱帯植物の国内での栽培も盛んになってきてはいるが、温暖化の影響は何も農業にだけ受けているわけではなく、インフラや食事などの生活そのものに直結しているため、温暖化に合わせて作物や栽培方法を転換すればよいというわけではない。もちろん現時点での対策としての高温に耐性のある品目や品種を選ぶことは有効ではあるが、もっと根本的な人類の生存や未来に関わる問題だと捉えるべきだ。
そもそも温暖化の要因は何なのか。 一般的には大きく三つの要因があるといわれている。 ①温室効果ガスの排出と増加
温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などがある。主なものとしては一番一般的な二酸化炭素になるが、これは産業革命以降の化石燃料をエネルギーの主とする構造が生み出してきたものだ。主に車や航空機などの移動手段や発電、 工業施設などが排出元となっている。また、全体としての割合は多くはないが農業関連としては畜産等によるメタンガスや土地利用の変化(開拓、開発など)による一酸化二窒素の排出なども温暖化に寄与している。ちなみにそれぞれの温室効果は二酸化炭素と比べメタンガスは約25倍、一酸化二窒素は298倍と言われている。これらの要因は産業ごとの責任ということではなく、それを使用する我々人間すべてに責任があり、特にそれを推進し経済活動を行ってきた先進諸国に要因があるともいえるが、あくまで結果論であり、途上国への優遇措置は必要であると考えるものの、世界全体で考えるべき課題と捉えている。いわば一人一人の意識の問題であり、それを先導する政治的な話もでもあるのだ。
②森林破壊と土地利用の変化 上記でも上げたように森林火災などの森林の破壊は大きな要因である。ただし、森林火災は温暖化を原因とした2次災害でもあり、そもそも農地の拡大や都市化、木材を目的とした途上国の森林伐採が要因の一つとなっている。そしてその需要を作ってきたのが我々先進国であり、その恩恵を受け豊かで便利な生活をしている我々なのだ。補足として、木を切ることがすべて温暖化につながるというわけではない。そうであれば大阪万博や最近の木材建築の流れができるわけはない。ニュース等でも知られる通り、森林は適切に管理することでその二酸化炭素の吸収率が変わる。樹齢によっても変わるため、間伐などを適正に行い、吸収効率の良い若木に陽を当て活性させるのだ。そういった意味で植林し、樹齢の古い木を 伐採し、木材として有効利用することで様々な価値を生み出しているのだ。同時に既存の立て方よりも製造過程の中でエネルギー効率が良いため、推奨されているのだ。
土地利用に関しては、土壌がもともと保持している炭素の放出による温室効果ガスの排出につながるためだ。そのため、新たな開拓・開発が起因している。
③エネルギー使用の増加
日本国内とは裏腹に世界では人口が増加しており、それに伴う経済活動の拡大により消費エネルギーも増加している。再生可能エネルギーの開発や使用燃料の効率化などの取り組みも進んではいるが、いまだ大きく依存する化石燃料には歯止めがかからず、依然として温室効果ガス排出の大きな要因となっている。
次に国内の農業分野の排出を見ていこう。
農水省のデータによると、2021年度の日本の温室効果ガスの総排出量は11億7000万t。そのうち、農林水産分野では4949万tで全体約4%。これだけ見るとやっぱり農業分野は大した負荷をかけてないと思うかもしれないが、農家も人間であり、他分野の恩恵を受けていることを考えるとその考えは当てはまらない。ちなみにメタンガスの農業分野排出量が2,218万tある中で稲作を起因とするものが44%、家畜の消化管内発酵が28%、家畜の排せつ物関連が9%である。我々は食事をするだけこれだけのメタンガスの排出に寄与してしまっているのだ。
こういった情報を真正面から受け止めると心苦しく思うだろう。だからどうしろってんだ!と言いたくなる気持ちもわかる。地球環境のことだけを考えるならば、人類が死滅するのが一番早い解決方法と言えるだろうが、もちろんそういうわけにはいかない。
ただ、これは紛れもない事実だ。真実としての情報はさておき、リアルはすぐそこまで来ている。無視することも可能だし、言ってしまえば我々が生きている間はさほど影響もないだろう。ただし、未来はそうはいかない。月並みな言い方だが我々の子や孫世代にツケが回されることになる。
だが、希望がないわけではない。現状でも過去に出された最悪のシナリオからはずれており、今も日夜この課題解決に取り組む社会がある。化石燃料に頼らない持続可能なエネルギー開発や人口光合成で二酸化炭素を吸収する機械、農業分野では工場廃熱を利用した大型ハウスや有機農業を推進する緑の食料戦略など、地球温暖化に向け、日々新しい挑戦と取り組みがなされ、そろそろ農家の耳にも届いているだろうカーボンクレジットは温暖化に取り組むこと自体がお金になる仕組みだ。
これから家庭での小さな取り組みで効果を実感しなかった活動は別に、私の様な凡人でも明確に畑や仕事の中で環境問題のために取り組むことができるようになる。そして、これからは資本主義で追い続けられた価値だけではなく、地球を守るという取り組みが勝ちに変わる時代にもなるだろう。 環境の問題は、国や社会などというくくりで解決できる問題ではない。
この地球に住み、この星を支配する人間という地球民族一人一人が取り組み、初めて解決に向かうのだと心から信じている。